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買った本

帰省に備えて,電車の中とかで読むために手頃な大きさと厚さの本を,生協で学割とか交通手段とかについて相談するついでに見繕ってきた.

専門書というよりも,どれも読みもの的な本なので,お値段もお手ごろ.3 冊で 7500 円ぐらい.linux kernel 2.6 解読室とかもあったんだけど,ちょっとデカすぎだったし,これだけで 6000 円近くするしなぁ.

光速より速い光 ~アインシュタインに挑む若き科学者の物語

これは,最近,タキオンが話題になってたから (笑)

UNIXの1/4世紀

これは以前からきむらさんに薦められてて,たまたま生協で見かけてパラパラとめくってみたら,一番最初の C コンパイラができるまでの苦労話みたいなのが書いてた (ような気がした) ので,面白そうだなと思って購入.

ハッカーズ (スティーブン・レビーの方ね)

ハッカーズは,ボクにとっては特別な本で.田舎から出てきたばかり (いや,大学自体もド田舎にあったんだけど) の,コンピュータのコの字も知らない世間知らずな少年を,この世界にひきずり込んだきっかけというか.

まぁ,大学で一番最初に図書館で借りて夢中になって読んだ本ということで.良かったのか悪かったのかは,未だにわかりませんが (笑)

もちろん,当時はこの本に出てくる登場人物たちを一人も知らなかったので,特別な感慨も無く,中身もなんとなく凄いなぁと思った程度で,ほとんど細かいところは理解してなかった (と思う) のですが (もう 5 年ぐらい前の話なので,あいまい).

今,あらためて目次の次の,登場人物紹介を眺めてみると.出るわ出るわ !! まさしく MIT 黄金期,計算機科学をハッカー文化を零から築きあげたブリリアントなハッカーたちが.「ビル・ゲイツ」「スティーブン・ジョブズ」「ジョン・マッカーシー」「マービン・ミンスキー」「リチャード・ストールマン」「ジェリー・サスマン」「スティーブ・ウォズニャック」… この世界の人間ならば,誰でも知ってる超有名どころだけでも,こんだけの人物が登場してます.

もちろん面白いのは,歴史の影に消えていった人物たちの話なんですが.そこには,黎明期から終焉まで,一つの時代が生き生きと描き出されています.そして歴史は繰り返す.

ざっとエピローグを眺めてみた (さすがに最初の方は読み覚えがあったので,一番記憶があやふやな終わりの方から読みはじめた) だけなんですが,いつの時代も,やってることは同じなんだなぁと.

結局,世の中には 2 種類の人間しかいないのかもしれない.ハッカーとノンハッカー,ものが動くしくみそれ自体に興味を持つ人間と,ものが生み出す価値に興味を持つ人間.金のためにコードを書く人間と,コードを書くために金を稼ぐ人間.時代を作る人間,時代に流される人間.理想を追いかける人間と,現実に流される人間.

今風の言葉で言うと,スーツとギークって感じになるのかな ? よく知らないけど.どっちが正しいとか間違ってるってことはもちろん言えないんだけど,お互いにお互いの価値観の中でしか生きられないので,対立することが多い.

エピローグを読んでいると,溢れる涙を抑えることができないとですよ.

しかし,たとえ両者のハッカーたちが,言葉を交したとしても,最も重要なこと,つまり,コンピュータ・システムの中で,彼らが発見したり作り出したりした魔法の話をすることはできなかった.魔法は今や,ライバル会社に調べさせてはならない,企業秘密なのだった.会社のために働くことによって,最も純粋なハッカー社会のメンバーたちは,ハッカー倫理の中心となる要素,情報の自由な流れを,放棄してしまったのである.外の世界が,内に入ってきていた.(p.603)

まぁ,いつまでもトイザらスキッズじゃいられない,今風に言えば,さっさと中二病から目を覚まして働け,ってことなんですが.現実を知ること,理想を潰されることの痛みというか.

いくら夢のかけらを拾い集め,再び組合せようとしても,一度失われてしまったものは,もう永久に元の姿には戻らない.奇跡のような時代とホットスポットが,そこに存在した.

もしかしたら google は,現代の MIT 人工知能ラボなのかもしれませんが,まぁ,遅かれ早かれ,人数が増えるにしたがって,その避けられない本質的パラドクスによって,同じ運命を辿って亡びることになるんでしょうなぁ.とかも思った.

The Goog Life:グーグルが従業員を子供扱いすることでつなぎとめている件

歴史は繰り返す.過去に学ばぬものは同じ過ちを繰り返す,とは言いたくないのですが.

なぜ LISP は流行らないのか ?

人力検索はてな (Lispはなぜマイナーか?)

いろんな理由を後から付けることはできるけど,ようするに,良くも悪くも,LISP は,本物の MIT 第一世代ハッカーが生み出し,育て上げた,ハッカーの,ハッカーによる,ハッカーのための言語であり,そして LISP マシンと LISP OS をめぐる理想と現実の戦いによって分裂し,本物のハッカーたちと共に亡びた,ということなんじゃないかと思う.いろんな歴史的偶然もあるけど.

個人的には,そのような文化を,よく理解もせずに,選民思想とか,宗教とか言うのは,ちょっと違うのでは無いかと強く思う.

地上に残された最後の MIT 第一世代真性ハッカー,リチャード・ストールマンはこう語る.

分裂と,その AI ラボへの影響によって,最も痛手を受けたのは,リチャード・ストールマンだった.彼は,ラボがハッカー倫理を守り通せなかったことを嘆いた.RMS は,出会った見知らぬ人々に,自分の妻が死んでしまったのだと話したものである.このやせた悲しげな若者が,実は悲劇的にもこの世を去ってしまった花嫁ではなく,ひとつの組織のことを話しているのだと,相手が気づくのは,会話を初めてずいぶんたってからのことだった.
...

「ぼくは,死に絶えた文化の最後の生き残りだ」と,RMS は語った.「ここがぼくの居場所だっていえるところは,もう世界のどこにもなくなってしまった.ある意味じゃ,死んだほうがましだって気がするよ」

リチャード・ストールマンは,MIT を去った.しかし,彼はひとつの計画を胸に秘めて,去っていったのである.それは,UNIX という登録商標をもったポピュラーなコンピュータ・オペレーティング・システムに,少し手を加えて書き直し,それを希望者全員に配るという計画だった.この GNU (「ヌーのノット・ユニックス」 の略称) プログラムに取り込むということは,彼にとって,「自分の主義に背くことなく,コンピュータを使い続けられる」ということを意味していた.ハッカー倫理は,かつて MIT で花開いていたときのような純粋な形では,生き残ることができないのを見てきたストールマンは,彼のやっているような小さな行為を無数に積み重ねることによって,外の世界でハッカー倫理を生かすことができるだろうと悟ったのだった.(p.608)

この商業主義との戦いことが,自分の理想世界を永久に汚された男が,GNU is NOT UNIX という再帰的頭文字に秘めた真の想いなのである.最初から勝ち目の無い戦いに弧軍奮闘する,復讐に燃える男の執念には,(その強烈な,狂信的ともとれる哲学に同意するしないに拘らず) 胸を震わされる思いがする.

時は流れ,時代は変わる.しかし,変わるもの変わらないもの.理想と現実.

この本を読み,過去を知ることは,やはり未来を知ることにつながってくるのではなかろうか.そんな感じと,非常にエキサイティングな当時の空気を感じられる一冊である.

最後に,あんまり関係無いけど,より現代的な事例というか (失礼な言い方でもうしわけありませんが) より身近な,同じような感傷を感じる文章を紹介して,この記事を終わろうと思う.

最近ボクが最もショックというか,やりきれないというか,明日は我が身というか,いろいろと複雑な思いを感じたのが,この記事である.

薔薇色の明日 捨てる勇気
俺は研究者を目指していたので、必要な資料として学術書がいくらか手元にある。しかし、これらの本や論文は、もはや俺の人生には不要である可能性が高い。
...
例えば、TroelstraとSchwichtenbergのBasic Proof Theoryとか。院試の勉強で随分取っ組み合いをした本で、捨てるのは忍びない。しかし、これを捨てることから俺のソフトウェア技術者人生が始まるのかもしれない。
次に、小野寛晰の情報科学における論理。これは学部の頃に必死になって読んでいたが、こういうものも捨てる勇気がいるのかもしれない。今後使うか使わないかは棚に上げても、この本を捨てるというのは俺にとって「ありえない話」ではあった。しかし、それも半年前なら通用したかもしれないが、今後のことなど俺にはわからん。
念のため自嘲など含めるつもりはないことを前置きしておくが、恐らく今後の俺に必要なものは既にある技術を使うためのハウツー本と、「どうやってデスマーチを避けるか」「プロジェクトを妨げる原因を取り除くには」といったお話を書いている本であろう。
...
constructivism in mathematicsも焼却処分かよ。

おそらくボクよりも 100 倍くらい優秀な方のこのような様子を見ていると,何とも未来に対して暗澹たる思いにかられざるを得ないのである.現実は世知辛い.

コメント

Secret

Lispは滅びぬ。何度でも甦るさ!

天空の言語 Lisp

RMS 「立て,鬼ごっこは終わりだ.終点が玉座の間とは,上出来じゃないか.ここへ来い!」

「これが玉座ですって ? GNU はお墓よ,あなたと私の.ラボが滅びたのに,王だけ生きてるなんて滑稽だわ.あなたに LISP マシンは渡さない.あなたはここから出ることもできずに,私と死ぬの」

「いまは,なぜ LISP が滅びたのかわたしよくわかる.シリコンの谷の歌にあるもの.土に根をおろし,商業主義と共に生きよう.経営陣と共に冬を越え,ベンチャーキャピタルと共にマシンを売ろう.どんなにハッカー倫理を掲げても,たくさんの可愛そうな LISP OS を操っても,AI Lab を離れては生きられないのよ !!」

RMS 「ハッカー倫理は滅びぬ… 何度でも甦るさ !!LISP の力こそ人類の夢だからだ !!次は LMI だ.ひざまずけ,命乞いをしろ!!シンボリクスから LISP マシンを取り戻せ!!GNU IS NOT UNIX !!」

「バルス!」

古い記事へのコメントでなんですが…

Lisp第一世代については愚民からも尊敬されこそすれ、宗教呼ばわりされることはないと思う。またハッカー文化の変容とLispが天下をとれなかったこととの関連もそれほど無い思う。当時のハードウェアにおいては他の言語の方が「道具」として優れていただけのこと(特にC言語以降)。

現在宗教呼ばわりされているのは、後世の例えばPaul Grahamのような人々がことあるごとに語る「○○言語の設計は誤り」「マクロが無ければ言語じゃない」「○○はLispが最初に導入した」「時代がLispに追いついた」みたいな

「Lispの記述力はァァァァァァァアアア世界一ィィィイイイイ!」

的発言が最大の要因(シュトロハイム発言に当てはめても違和感がないのは自分でもびっくりだ)。
下手なりにLisp(scheme)が好きな私でもうんざりする。
多少囓った今では、そう言いたくなる気持ちは分からなくはないけどやはりキモイ。Lisp以外ではRu(以下略

>> kurage さん

う〜ん、そうなんですかね。
むしろ、愚民は尊敬どころか、コンピュータの存在や概念自体知らなかったと思いますよ。
なにやらわけわからんことやってる宗教団体と、外から見たら対して変わらなかったのでは。

(今でも対して変わらないと思いますが。IT 業界が虚業扱いされたり、ほりえもんが叩かれたり)

Lisp が天下を取れなかったのは、UNIX が流行って、UNIX の記述言語が Lisp じゃなかったというだけのことだと思います。

ハードウェア効率自体も、Lisp Machine 的なアーキテクチャが発展し続けていたら本質的な問題にはならなかったでしょうし。

やはり、UNIX が流行って、C が流行ったから、その方向にアーキテクチャが進化したから、後付で考えると 「C が道具として優れていたから勝った」 ように見えるだけのことであって、おそらく真実は、たまたま偶然 UNIX が流行る要因があって、Lisp Machine が廃れる要因があって、C が流行って、他の言語が駆逐された、というだけのことだと思います。

(もちろん、そう単純化できるものではないと思いますが。優れているものが流行るのではなく、偶然の要因や、企業のマーケティング影響力の方が大きいと思います。

インターネットのために UNIX が流行って、UNIX で C が流行ったからその後 C++ ができて、たまたま Windows が記述言語に選んだから C++ が一般化して、Java につながって、C# とかが、という流れに)

宗教呼ばわりされているのは〜 からの部分については、ほぼ同意です。

まぁ、Lisp に限らず、あまり一般的じゃない技術や概念について熱く語る人は、すべて宗教呼ばわりされてしまうってのはあると思いますので、Lisp とか Ruby を叩くのもまたナンセンスな気はします。

あと、Lisp が宗教呼ばわりされるのは、いろいろな論点がごちゃ混ぜに語られることが多くて、あまり科学的に語られないからってのもあると思います。

例えば、S 式やマクロってのは、フォーマットと、その変換の話ですから、別に Lisp に限定されるものでは無いんですよね。XML と XSLT とかでも、本質的には変わらないと思います。

そこでまた、可読性や記述性が云々とか言い始めると、いよいよ主観が入ってきて宗教じみてくるという。
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  • 京都のデバッガベンダーに勤めるアラサー会社員。

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