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ホワット・ア・ワンダフル・ワールド

私は知識に何ものかを付け加え,また他の人々がより多くのものを付け加える手助けをした --- G.H.ハーディ

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プロフィール

あろは (alohakun)

  • Author:あろは (alohakun)
  • 若槻俊宏 (WAKATSUKI toshihiro)

    連絡先 : alohakun ___at___ gmail.com
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    twitter : http://twitter.com/alohakun

    abstract

    プログラミングという人間の知的行為を体系化し,単なる職人芸ではなく,サイエンスにするための研究をしています.

    具体的には,等価変換計算モデルに基づいた,仕様記述からのプログラム合成の研究をしています.

    もっと噛み砕くと,プログラムの正しさをどのように定式化し,どのような枠組みで,どのように変換を進めていけば,正しさを保証したまま,効率的なプログラムを手に入れることができるのか,ということについて研究しています.

    キーワード : equivalent transformation, computation model, programming paradigm, formal specification, program synthesis













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第5世代コンピュータを創る - 渕一博に聞く

2006/08/26(土) 20:08:17

メチャクチャ面白かった.一気に読んでしまった.

どのくらい面白かったかというと,僕は本を読みながら,後でブログとかに引用しようと思ったところのページを折りながら読んで行く (だから,図書館とかから本を借りるのは,あんまり好きじゃない.どうでも良いレポート用の資料とかなら良いけど) んだけど,ほとんど 2 〜 3 ページごとに折り目がつくありさま.つまり,折り目をつけた意味があんまり無かった.

というわけで,普通の本だったら,僕が何を言っても蛇足.「ぜひ読んでみて下さい」 で終らせるしかないような素晴らしい本なんですが,絶版の本なので,少しは中身を紹介しないとしょうがあんめぇと.そんなこんなで,引用が若干多めにあります (札幌の BOOK OFF で 105 円で売っていた本だから,東京の方のちゃんとした古本屋ならばどこにでもありそうですが.それにしても,近年希に見るコストパフォーマンスの良さ).

とりあえず,淵博士の紹介文を引用.

コンピュータの分野で渕一博といえば,知らぬ人はいない.アメリカだろうが,ヨーロッパだろうが,どこでもフチサンで通ずる.というのは,世界に先駆けて,計算機能に加えて推論機構をもつ第五世代コンピュータの構想を発表し,その研究開発の先頭に立っているからである.
淵さんは 1936 年 (昭和 11 年) 生まれだから若くて,目もと涼しく,いかにも頭脳明晰といった感じがする.いや感じだけでなくて,ちょっと話を聞けば,理路整然としていて,本当に頭がいいことがわかる.それでいながら,近よりがたいというわけではない.さめているが,冷たいというのではなく,うちに情熱を秘めたたいへんなロマンチストである.ちょっとしたいたずらをする茶目っ気もある.なかなかの照れ屋さんだが,それは己れを律するにきびしいからだろう.

淵博士と言ったら,僕の中では,第五世代国家プロジェクトのリーダーをやって,何十冊も知識工学系の本を出している (監修ですが,
プログラム変換
とか 制約論理プログラミング とかは面白かった.実は 並列論理型言語GHCとその応用 はちゃんと読んでない・・・ (汗)) スーパーマンというイメージがあったのですが.

実は,若い頃はけっこうブラブラしてたらしいです.やっぱりサボリの精神は大切なんですな w

二十数年間,毎日遅刻してたとか,居眠りばかりしてて報告書に書くことが無いから,メディテーション (瞑想) してたと書いて上司のギリース教授にあきれられた,とか w

淵 孤独に耐えて,孤独の作業をやるということがあまりできない質みたいですね.
赤木 淵さんは,目標があると,それを愚直に追いかけ,ぎりぎりやっていくというのではない.そうすると,思考をセーブしているのか,それは節約なの,あなんなのですかえん.その行為は.
淵 節約というよりも,やりだしたら要領よくやらなければいけないというか,やりたいみたいな気持ちはあるんですね.これが持続しないからだめなんだけれども,瞬発的にいうと,そういうところでなるべく合理的にやるとか,生産性を高くやりたいみたいな気持ちがあって,そのための手立てはなんだろうみたいな発想はあるわけですね.それが永続的に続けば非常な実業家になれるはずなんだけれども,これがときたまにしかこないからだめなんだけれども.(pp.62-63)

そういうメディテーションとか,ランダムウォークでぷらぷらやるタイプの方だったようです.「チャランポラン風にやるのが,ある意味で,組織化の方法としては有効なのではないか」,とのこと.

第五世代が動き始めたのが,1982 年.僕が生まれる前の年です.
83 年に,ファイゲンバウムが例の本を出して.
この本が出たのが,84 年.

渕一博博士は,昭和 11 年生まれ.僕は昭和 58 年生まれですから,47 歳差.もし御存命ならば,今年で 70 歳ですか.日本人の平均寿命的には早いですが,無理もないという気がする年でもあります.

しかし,それにしても,私の学部時代,一時期学長だった西沢潤一大先生は,80 歳にしてなお最前線にいるんだから,驚異的ですな.大正 15 年 (1926) 生まれとかだったはず.僕が生まれた年には,もう IEEE のジャック A モートン賞を取ってたわけですからね.70 歳というのも,僕の感覚からすると高齢ですけど,実はけっこう若いのかもしれない.

当時は,日本では大きな OS は作れないとか,とかくアメリカに引けめを感じる空気があったみたいです.同じことを日本でやっていても全く評価されず,アメリカがやり始めると後追いが沢山出る,みたいな.ここらへんの話は,西沢先生も著書の中で,再三再度述べておられます.そんなこんなで,淵博士は,ずっと 「できそうもないことを人を集めて金を無駄使いする」 という悪口を言われ続けてきたそうな.

ぼくとしては,だいたいできそうだ,こんなイメージのこんなものかなというのがあって,むしろできそうだからやるぐらいの気持ちでやってたんですね.(pp.84-5)

アメリカで Multics プロジェクトとかが動き始めていたころ.
その後,太っ腹な上司 (かなりはらはらしていたそうな) に恵まれ,若い連中でワイワイやって,ETSS (電気試験所 (ETL) のタイムシェアリングシステム (TSS)) を作って.そしたら電総研のあいつらができたんがからやれるはずだと,いたるところでワーッと.みたいな.

淵 そこでワイワイやった若者の連中が今でも結構活躍していますね.
赤木 斎藤さん.それから・・・
淵 田中穂積君というのがいて,東工大に去年 (1983 年) 移りましたけれども,それだとか,金田悠紀夫といって神戸大学に五,六,年前に移った人とか,今 ICOT にきている横井俊夫君とか,古川康一君などもそうですが,そのあとの電総研における情報処理の中核部隊はその若者連になったということがありますね.(pp.83)

やはり,モノになるかならないかすらわからないものを育て,新時代を作り上げた人達は偉大だな,と.

んで,時代は進み.

さっきのソフトウェア科学会の話などでも,ああいうものを作ろうではないか,というのはその世代から出てきた話なんですね.単に職人芸的な技術ではなくて,もう少しサイエンティフィックに見ようとか,理論的にも見てみようという,そういう意識があるんです. (中略)
たとえば米沢明憲君という東工大の助教授をしているのがいて,彼などはアメリカに行ってきて,アクター理論というのをやってきたとかですね.(pp.104)


コンピュータ・サイエンスというか,サイエンスらしくしたのは,むしろヨーロッパ勢なんですね.ダイクストラもその1人かもしれないし,あとイギリスだとホォアという人もいますし,スイスにヴィルトがいるというので,並べ立てると,どちらかというとヨーロッパのほうが多いわけですね.(pp.151)

暴走は若者の特権のように思われがちですが,ちゃんと暴走するためには,いろいろな見識が無いと,実は暴走できないという話.お遊びで峠を攻めてるママゴト走り屋なんかよりも,幼い頃から基本を積み上げ,ちゃんとしたトレーニングを積んで来たプロのドライバーの方が,はるかに安全確実に速く暴走できる.

日本人は昔から,独創力よりも評価力のほうが劣っていると,僕は思っているんですね.

(中略)

結局,若い人たちで先頭に飛び出して暴走するやつがあまり出ないのは,まわりの評価が不明だから,とにかく,暴走は危ないと思う.暴走するなと,まわりもいう.ある程度目が肥えてくれば,このへんなら少し暴走してもまだいけるかもしれないとか,距離は延びると思うんですよ.もう少し走らせてみようとか.だけど,一言で言うと,日本人というか,これも乱暴な議論だけれども,自分の目でみて判断できない修正のほうが致命的じゃないかと思っているんですね.

賭けの精神で,おれはやってみようというのも少ないんだけれども,あいつにやらせてみようというのはもっと少ないわけですね.(pp.160)

まぁ,プログラミングの話とか,研究所かくあるべし,みたいな話もたくさんあって,どれもこれもやたらめったら刺激的で面白いんですが,このペースでいくと結局全て引用してしまいそうなので w

ここらへんは,このブログが参考になります (他人任せ).

並列処理とプログラミング言語


渕さんは、XML PRESS Vol.5で、「第五世代コンピュータでは、並列分散をめざしていたのだけど、今ならSOAPかな」とインタビューに応えられています。今は、盆栽的プログラミングで、 RubyでXMLとかをされているわけだけど、XMLがメッセージを持つデータとすると、それを処理するRubyなどは関数型プログラミング言語に対応している。結局、現段階では並列分散ではない。ハードウェアの進歩が予想以上の速さで進んだのが、並列分散の必要性を未来に押しやったのかもしれない。「第 5世代・・・」には、「メモリでどこまでいくか。21世紀には60メガぐらいまでいってくれれば結構な話ですが。」という話が出ているのですが、100倍ぐらいのイメージだったのが今や1000倍を超えることが常識になりつつある時代ですから。


# このブログのリンクを辿ると,XML as a Programming Language というキーワードが.k.inaba さんとこの研究室でやっているアレとは何か関係があるのだろうか ?

「計算機から推論機へ」,というスローガンは,簡潔でいてなおかつ要領を押えていて素晴らしいなと思った.

僕の持論ですが,設計がよい例ですが,1人とか数人でできるものしかいいいものはできないんじゃないかと思うんですね.そのときに,ベースとなる技術としては,裏にうまい積み重ねがあって,コンピュータ自身がもうちょっと別な形になるとか,あるいはそこに知識が加わるみたいなことがあれば,数人でデザインできるわけです.道具は使うわけですけれども.

赤木 だから,数人でできるようにハイラーキをあげていくということですね.

そうです.どこからもパッケージ化できるようにして.

赤木 そして,いつでも数人でやれるような,その下はハイラーキを作っていくのであって,五百人の大部隊にするのは,そもそも失敗である.

というわけで,大変古い本なんですけど,今でも通じるような内容がたくさんある本です.これは第 5 世代全般にも言えることだと思います.というか,第五世代を,そのプロジェクトだけで評価するのが間違いなのではないかと.様々な,有形無形の成果を生みだし,その流れは現在においてもなお受け継がれていると思います.

赤木 歴史などはどうでもよくて,とにかく先端を走ればいいというのがありますけれども.それでは先端は本当は走れないんですね.つまり,振り返っていないと,なるほど,これはエキサイティングだ,という評価ができない.

淵 ちょっと見ると突然の天才みたいなのが西洋には多いですよね.しかし,アインシュタインをはじめ,特に物理屋などはひところはいっぱいいたけれども,あれは全然思いつきではないんですね.彼らはものすごく歴史をよく知っているわけです.日本の場合には,自分の歴史が少ないから,あるいはほかの言葉で書かれているからということがあって,意外とみんな勉強していないと思うのですが,よその天才も,べつにひらめきだけの天才じゃないのではないか.しっかり勉強して,それでもつぶれずに生き残ったやつが天才だと思います.「なるほど」を何回も積み重ねて,しかもパッといったということだと思うんですね.

もの凄く面白いものを見て,論文を読んで,「未来が変わる」という予感がする,凄すぎて顔面から血の気が引く.そういう興奮は,ちょっと学問以外からは得られないのではないかと思います.そして,そういう境地に立つためには,やはり勉強して,今も過去もちゃんと知ってないと,何が本当に重要なのか,何が本当に新しいのか,何が未来に繋がるのか,何が袋小路に詰まるのかがわからない.

まぁ,あんまり Web とか見ててもしょうがないな,とか思った.やっぱりちゃんと一次文献 (本,論文,ソース) を読まないと (自戒).

Web が役に立つのは,どの本が良いとか,どの論文を読めば良いとか,そういうポインタだけだね.後は,ちゃんと本を読んでいる人が最終的には強い.

(ダラダラ Web を見ていて気がつくと一日が終っているズークー管理人)

結論 : 未来を知りたかったら,過去を知ろう.

20 年前と今.そして今と 20 年後.


いなくなってしまった淵博士のこと・・・ ときどきでいいので 思い出してください.


第五世代は滅びぬ,何度でも甦るさ ! 世界をリードすることこそが,日本の夢だからだ !

(もう今の日本はいろいろな意味で終っているので,無理でしょうが)

第五世代が,他の国家プロジェクトと大きく異なっていたのは,やっぱり単なるトップダウンの官僚的中央集権ではなく,中心に淵博士の思想と人柄に共感して集まってきた,真剣に未来を創ろうとした若者たちがいたからなのかなぁ,とか思った夏の夕暮れ.物資は何も無かったけど,夢と熱意だけはいつも溢れていた,良い時代だったのでしょうね.北海道の短い夏ももうそろそろ終り,厳しい冬の予感が漂い始める今日この頃,皆さんいかがお過ごしですか ?
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コメント
とても参考になりました。
東大図書館には取り上げて頂いた本が無いんですよ(無)
でも東工大にはあるみたいなので借りに行きたいと思いました。
レビューありがとうございました。
マトスン #jC3ZQd9k|2006/12/26(火) 14:31 [ 編集 ]
> マストン さん
おお,お役に立てたようで何よりです.

今,HACKERS という本を読んでいるのですが,その中にも LISP マシンが,日本の第五世代との国際競争に利用されたという記述が… 本当にいろんな波及効果があったんですねぇ.

「LISP マシンの完成は大した偉業だった.しかし,グリーンブラッドは,マシンをいくつか作って,それでハッキングをすること以上の何かが必要なのだと感じた.LISP マシンは,この上なくフレキシブルなさまざまな世界を作り出せるマシンであり,ハッカードリームの具体的表現だった.しかし,その「思考機械」 としての価値ゆえに,LISP マシンは,日本人との人工知能レースで,アメリカが技術的リードを保つための道具にもなっていたのである.LISP マシンの重要性が AI ラボのレベルを越えていることは確かだった.このような技術は商業的分野を通して広く普及することが最も望ましいだろう (pp.597-8)」

当時の,AI に対する期待は,本当に物凄かったらしく.「第五世代コンピュータ 日本の挑戦」 (外国人から見た目線の本) とかを読むと,本当に当時のアメリカは日本に脅威を感じていたということが伝わってきます.

# その反動がこれまたものすごくて,もう 20 年ぐらいずっと AI 冬の時代なんですが.当時は Prolog の勢いが凄かったようですが,今は….最近 LISP とかは多少流行ってるみたいですが.

そんなこんなもろもろの,いろんな影響が絡み合って,今の現状があると.それが良かったのか悪かったのかは,何とも言えませんが.
あろは #wNX6xxGw|2006/12/26(火) 15:19 [ 編集 ]
実はリアルに作ろうとしています。
 
 上の投稿が2年前ですか。早いものですね。
 実は、今、北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)にいます。
 
 第五世代コンピュータの核言語を設計した人の研究室に来ました。
 ちなみに、その方、今は日本創造学会の会長さんです(笑)
 
 リアルに ICOT ジャーナルとか置いてあります。
 ある意味でパラダイス。もしくはロストワールド・・・。
 
 たまたま第五の資料を漁ってたら、過去の自分のカキコを見付けて、
 懐かしくて書き込んでしまいました♪
 
マトスン #-|2008/07/21(月) 00:31 [ 編集 ]
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